もちろん皆さんご存じだろうが、俺が中学生の頃、ザ・ベストテンという歌番組が大人気だった。

ある時、何の歌かは忘れたが、サザンオールスターズが中継先から歌を披露する回があったのだが、その場所がホープ軒というラーメン屋の店先だった。

桑田佳祐いわくレコーディング・スタジオが近くにあり、ここのラーメンをメンバーやスタッフと共にしょっちゅう食べているとのこと。

当時特にサザンのファンというわけではなかったが、まだテレビで街のグルメ情報が出てくるのが珍しかった時代でもあり、ホープ軒という屋号の響きにも魅了され、俺はどうしようもなくそのラーメンが食べたくなった。

で、約一年後、無理矢理もらったお年玉に加えて細々貯めた小遣いで往復運賃を工面し、

「日帰りならば行ってもよい」

という親父の許しを得、俺は堂々初新幹線に乗り込んで初東京、というよりもピンポイントでホープ軒に向かったわけである。

とまあ、ここまでは良かったのだが、残念ながら東京駅を降りた俺が向かってしまったのはホープ軒のある千駄ヶ谷ではなく千駄木であった。

間違えたのも仕方ないか...と、今でも思う。

こうなるとネットなどない時代なので修正が効かぬ。

駅前の誰に訊いても知らないというし、交番でも、

「この辺にホープ軒という有名なラーメン屋はありますか?」

と尋ねても、

「知らないなぁ...」

とのこと。

数時間周辺をうろついて自力で探してみたが見つからず、そのままがっくり肩を落として大阪に帰りましたとさ。

(若き日の俺は図らずも昨今で言うところの谷根千を半泣きで散歩したわけである。)

ちなみに、俺が念願のホープ軒のラーメンを実際に口にしたのはそれから十年以上も経った後のこと。

ほろ苦い青春の思い出補正の味がスープに加わり、それはそれは感動的に美味しかった。