昔、私があちこちの気功治療院巡りをした話はこちらに書いたが、その時のもう一つの思い出、それは、
「昔はどこの都道府県にも一発屋の治療家が一人はいたな...」
というもの。
一発屋...
芸能界で言えば一芸あるいは一曲が大当たりしてしばらくは社会現象にまでなるものの、その後は時の流れと共に世間から徐々に忘れ去られてゆく、そんな存在。
私のいる治療業界には二つのタイプの一発屋がいる。
一つは、テレビで取り上げられたり、あるいは本が売れたりして一時的に衆目を集めるものの、徐々に衰退していくケース。
他方は、治療の達人にしてしばしば奇跡的な結果を出すものの技術の伝承がなされておらず、やがては一代限りで消えていくような儚い存在、いわば愛すべき一発屋である。
当時、後者のような民間療法家は得てして宣伝を全くしておらず、知る人ぞ知るというマイナーな存在でありながら、口コミによって常に門前市を成す盛況振りで予約一つ取るのもままならない。
自分で言うのも何だが、かくいう私自身も後者の一発屋に属する人種であろうと自分では思っている。
ただ、私が彼らと決定的に違うのは、世はネットやSNS時代になり、このように自分の治療院のホームページを持てるようになったこと。
Googleで検索すれば私の治療院がヒットするので、サイトを持つことそれ自体が宣伝になっている。
よって昔の一発屋のように知る人ぞ知る的に埋もれたりはしないが、いずれ私の気力体力の衰えと共に一発屋としての運命を全うすることになるだろう。
それでいいと思っている。
「なぜ後継者を育てないのか?」
という質問をたまに受ける。
技術指導、あるいは、弟子入りを望む者さえいる。
けれども、それは無理な相談。
例えがあまりに偉大過ぎて申し訳ないが、もしイチローのようなバッティングをマスターしたいとして彼に弟子入りし、24時間付きっきりで指導を受けたらどうなるだろう?
イチローのようなバッティングがマスターできるだろうか?
それは無理。
フォームだけは似たような選手になれるだろうが、どれだけ熱心に彼の指導を受けたところでイチローの残した数字には遠く及ばない。
それは気功治療も全く同じこと。
私が行っている気功治療の外側を教えることはできても、では私と同じ結果が出せるかといえばそれは無理。
気功治療、特に遠隔気功治療の場合、持って生まれた資質や霊格の問題もある。
できる人は教えなくてもできるし、できない人は何十年やってもできない。
よって、後継を残したいと思っても一発屋になるしか他に道がないのだ。
今から三十年ほど前には一発屋と呼ぶに相応しい民間治療家が、どの都道府県にも一人はいたものだ。
今はどうだろう?
もしいるのなら、お互い絶滅危惧種として見苦しい真似はせず、一発屋の本分を全うしたいものだと強く思う。