気が付けば、いつの間にやら世の中鍼灸治療ブームだという。

確かに「ガッテン!」等々、NHKでも鍼灸治療をテーマにした番組をよく見かけるようになった。

東洋医学に従事する私にとって当然この風潮は大歓迎だ。

そこで、鍼灸治療を行っていない私の治療院とは直接関係がないものの、これから鍼灸治療を受けたいと考えている方々のためにちょっとした注意点やアドバイスを記しておこうと思う。

 

鍼灸治療を受けられる病院あるいは治療院は概ね以下に大別することができる。

1:大学病院での鍼灸治療

2:専門学校での鍼灸治療

3:鍼灸整骨院又は鍼灸接骨院での鍼灸治療

4:鍼灸専門治療院での鍼灸治療

1:大学病院での鍼灸治療

西洋医学と同様、上記分類の中で患者に最も安心感と期待感を与えるのが大学病院での鍼灸治療であろう。

教授先生直々に鍼を打ってもらえるわけであるから、これほどの安心感も他では決してない。

ただし、大学というアカデミックな組織に属しているがために治療においては科学的データが重視され、鍼灸治療が持つ無限の可能性を活かしきった治療がなされているかといえば、必ずしもそうとはいえない。

換言すれば、それは秀才が行う治療であって平均点以上はそつなく確実に取れるものの、時に天才が行う奇跡的な治療を期待するには無理がある。

ツボ一つ選ぶにも科学的な根拠が求められるので、そこに直感の働く余地はなく、これが治療の限界を作ってしまっている。

しかしながら、鍼灸治療に奇跡的な治療結果を期待している患者は少なくない。

よって、使い分けの一つの基準として

・肩こりや腰痛等、何とか我慢しながらも生きていける症状の場合、大学病院における鍼灸治療は最高の選択肢となり得る

・ガンや筋萎縮症等々、その症状を治さない限り以後の人生において深刻な影響を及ぼす場合、つまりは奇跡的な治療を期待する場合には4で解説する鍼灸治療院が最も望ましい選択肢となろう。

2:専門学校での鍼灸治療

言葉の響きからは大学病院における鍼灸治療と似ているイメージを与えるが、その実体は全く異なる。

大学病院における鍼灸治療は高度な専門知識を持つ教授や講師からの治療が保証されており、かつ、最新の医療機器を補助的に用いた科学的な治療が期待できる。

他方、鍼灸専門学校で行わている治療の第一義はそこで学んでいる生徒の技術向上にあるので、大学病院で受けられる治療と比べればそもそもの目的自体が異なり、受けられる治療レベルにおいても当然雲泥の差がある。

その分治療費も大学病院に比べれば格段に安いわけだが、鍼灸治療に対して希望を抱く者にとって金額の安い高いは大した問題にはならないだろう。

よって、卒業生である私が言うのもはばかられるが、鍼灸専門学校での治療に過度な期待を抱いてはいけない。

3:鍼灸整骨院又は鍼灸接骨院での鍼灸治療

日本全国どこの町であれ「鍼灸整骨院」又は「鍼灸接骨院」の看板をよく見かける。

地域によってはコンビニや喫茶店よりも多く目に付く。

しかし、これらについても私の知らない例外はもちろんあるのだろうが、総じておすすめするわけにはいかない。

というのも、上記の看板を掲げている先生方は国家資格において柔道征復師及び針灸師をダブル取得している。

わざわざそのようなことをする主な目的は整骨院での治療オプション料金を少しでも上げるためだ。

有り体に申せば、資格さえ取れば収入が増すという安直な発想の先生が多い。

このような院において受けられる鍼灸治療は極めて教科書的であり、自分でツボを刺激するのと変わらないレベルであると言っても当たらずといえども遠からずである。

2と同様、過度な期待を抱かない方が良い。

4:鍼灸専門治療院での鍼灸治療

そもそもの数が少ないのでその看板を見つけるには苦労するだろうが、私がおすすめしたいのが鍼灸専門の治療院である。

奇跡的な鍼灸治療を行う先生が掲げているのが得てしてこの看板となる。

これから鍼灸治療を受けようという場合、先ずはネット等で近くに鍼灸専門の治療院がないかチェックすべきである。

特例:開業医が行う鍼灸治療

その数は片手で足りるので敢えて分類には含めなかったが、開業医がメインの治療方法として鍼灸を用いているクリニックが存在する。

漢方を多様している医師はそれなりの数存在するが、これが鍼灸となるとめっきり数が減る。

もし通院圏に存在するのであればあれこれ悩むまでもなく候補の筆頭に挙げるべきである。